有限会社 横溝工務店

「一服のひととき」— Web担当の茶道日誌

一服のひととき

 

第三回目 茶道は「頭カチカチ」ではダメ!?

6月最初のお稽古は、三木町棚(みきまちだな)という棚を使ったお点前でした。
前回ご紹介した「丸卓」とはまた趣が異なり、この三木町棚には、引き出しがついています。

この引き出しには次のようなものを入れます。(※同時に入れることはありません。)

  • お薄器:お薄で使う抹茶を入れる容器
  • お仕服(おしふく):お濃茶(おこいちゃ)で使う抹茶を入れたお濃茶器を入れる袋

この棚はほぼ毎年お稽古で使うのですが、去年、思わぬところで頭を悩ませてしまいました。
それは、お薄のお点前でのこと。
お薄器をこの引き出しにしまう際の「持ち方」で疑問が発生したんです。

引き出しを開けてお薄器を入れる、たったこれだけの所作に何を迷うのか、と思うかもしれませんね。
でも、ここで迷っちゃうんですよ!

意外な落とし穴!お薄器の持ち方

私を悩ませたのは、「一度右手で取ったお薄器をそのまま引き出しに入れるのか、それとも一旦左手の上にのせてからまた右手で取って入れるのか?」という点でした。
「なんでそんな面倒なことをまた考えるの?」って思いますよね。
私もです!

実は、お薄器にはいくつか種類があって、それぞれ持ち方が違うんです。
真横から持つタイプと、上から持つタイプがあるのですが、引き出しに入れる際に真横から持っていると、どう考えても入れにくいと思いませんか?
(※上から持つ…正確には右手で斜め上から三日月、あるいは半月のように持ちます)

「タイプが違うのだから、所作が違ってもいいはず…」と頭の中がグルグル。
この些細な違いが、私を思考停止状態に陥らせてしまったんです。

調べてみると、上から持つタイプはそのまま入れ、真横から持つタイプは一度左手にのせ、上から持ち替えて入れるのが正解でした。
(ちなみに、拝見というお作法がある場合は、また違った扱いになるんですよ~!)

扱い方が違うのに、所作が違ってもいいはずなのに、こんな変なところで迷いが生じるんです。
まさに頭カチカチ!

宗匠の言葉に学ぶ「柔軟な心」

そんな凝り固まった頭で、以前太宰府にある表千家九州茶道館で行われたオリエンテーションで、宗匠から聞いたお話を思い出しました。
「表千家には詳しく書いた本はないけれど、それは書いてしまうとそれ以外が間違いと思われるから。詳しく書かない部分はその時々の状況に合わせて違っていい。」
頭カチカチだった私には、この言葉が雷に打たれたような衝撃でした。
マニュアル通りでなければダメ、という考えに縛られがちですが、茶道の本質はもっと柔軟な心で向き合うことにあるのだと気付かされたんです。

アタフタ経験が知識となる

そんな大騒動を繰り広げたおかげで、今年の三木町棚のお稽古はとてもスムーズに動くことができました。
聞いただけ、読んだだけでは、自分が思っている以上に知識として蓄積されない場合があります。
こんな風にアタフタした経験こそが、自分の中に確かな知識として積み重なっていくのかもしれませんね。

今回登場したお道具たち

お薄器「金輪寺(きんりんじ)」

横から持つタイプのお薄器です。
写真のお薄器は、この時期にぴったりのホタルの模様が描かれていて、とても風情がありました。

お仕服とお濃茶器

 

お仕服はお濃茶器(茶入れとも呼びます)の「洋服」だと考えてください。
最初はこのお仕服の中にお濃茶器を入れておきます。

「考えなさい」~日常にも通じる茶道の教え~

もう一つ、宗匠のお話で心に残っている言葉があります。
それは「考えなさい」というもの。
形にとらわれるだけでなく、その所作の真意を深く考えることの大切さを教えていただきました。

この二つの宗匠のお話は、茶道のお稽古だけでなく、私たちの普段の生活にも深く当てはまるなと感じています。
マニュアルにないから動けない、ではなく、状況に応じて自分で判断し、より良い方法を模索することの大切さ。
そして、何事も表面だけでなく、その裏にある意味を考えること。

あなたも、日々の生活の中で「これで本当にいいのかな?」と立ち止まって考えた経験はありませんか?
そんな時こそ、新しい発見や、自分自身の成長に繋がるチャンスかもしれませんね。

それでは、また次回。

 

※この記事は、私がお稽古(表千家)で日々感じている茶道の魅力を、私の言葉で綴ったものです。
茶道の世界は奥深く、流派や先生によって様々なアプローチがあります。
ここに書かれていることが、すべての方に当てはまるわけではないかもしれませんが、茶道への興味のきっかけになれば幸いです。